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開催日:2021年5月29日(土)
会場:浜松アリーナ
TEXT & PHOTO :橋爪充
2021年5月29日に静岡県浜松市の浜松アリーナで行われたFリーグ2021/2022ディビジョン2第2節、アグレミーナ浜松対デウソン神戸は1対1の引き分けだった。浜松、神戸ともに1勝1分のシーズンスタート。最後まで強度と緊張感の持続する好ゲームを、次節以降につなげたい。
高橋優介監督の初陣となった開幕節はポルセイド浜田に3対0で勝利した浜松。連勝がかかるホーム開幕戦で、昇格候補のデウソン神戸と対戦した。
浜田戦のメンバーから、ゴレイロを変更。三浦弘暉がスタメンを得た。FPは前節と同じ顔ぶれ。キャプテンマークを巻く鷲北一輝、松本行令、武田彰、須藤慎一でスタートした。
立ち上がりは神戸の組織的なディフェンスが機能。鈴村拓也監督が送り出した3セットは、ボールホルダーに対するコースの切り方と、パスコースの読みが連動しており、足の出し方なども徹底した訓練の跡がうかがえた。自陣の第2PKマーク辺りから始まるハイプレスに、浜松は大いに苦しんだ。
ただ、先制したのは浜松だった。5分、ゴレイロ三浦のスローは、相手ゴレイロとフィクソの間に入り込んだ松浦勇武の頭にどんぴしゃり。軽く飛んで頭を振った松浦が見事なゴールを挙げた。三浦はこの後も攻撃の起点としてよく機能した。相手を引き付けてのパスやゴール前へのロングスローは、この試合全体を通じて浜松の大きな武器となった。
前節のヴィンセドール白山戦では1対3からゲームをひっくり返した神戸に、慌てた様子は見えない。8分、右CKからのルーズボールがフィクソの佐川祐己の前にこぼれる。これを佐川が、ゴール左上の「ここしかない」という場所に蹴り込んで同点。前半はこの後も高い位置でプレスをかけ続けた神戸の優勢で終わった。
後半の神戸は前半の3セットを少し崩し、「2・5」セットのような選手起用で強度の高さを確保する。浜松はファーストセットと松浦勇武、巽優太、萩原洪拓、田中智基のセカンドセットが核。高橋監督は、相手のセットに合わせてセットチェンジするのではなく、試合状況と個人のコンディションを主眼に置いて選手を投入した。
前半はプレスの回避に四苦八苦した浜松だったが、後半はピヴォの松本が下りてパスコースを増やしたり、ゴレイロ三浦がボールを早めに前線供給したりして、少しずつ自分たちの形を作り出す。特に、ファーストセットの右アラ武田、セカンドセットの左アラ巽が、縦への仕掛けを増やしてチームを活性化した。
前半ほどにはゲームを支配できなくなった神戸だが、マンマークを基本とした守備は、構築美を感じるほど堅固。浜松の選手がスイッチや斜めのドリブルで攪乱を試みても、スムーズな受け渡し、局面ごとのアタックとカバーの的確な関係は崩れることがなく、ゴール前の決定機を数多く作らせなかった。
ミスをした方が負ける、という緊迫感が最後まで途切れなかったこのゲーム。残り1分を切ってから、双方にチャンスが訪れた。浜松は左サイドの細かいパス交換から須藤がファーポスト付近に鋭いスルーパス。これをバックステップで裏に抜けてゴレイロと1対1に持ち込んだ鷲北がダイレクトシュートするも、態勢に難があり当てるのが精一杯。神戸も前線に残ったフリーの湯浅拓斗に長いボールが入ったが、左足シュートはチップ気味になってしまい不発に終わった。
ともに特徴を出しながらも痛み分けに終わった第2節。高橋監督は「最後まで力を落とさずに戦えていた」と前向きに捉えた。次節は6月19日に全日本選手権覇者のしながわシティと対戦する。
▼アグレミーナ浜松 1-1 デウソン神戸
5分 松浦勇武(浜松)1-0
8分 佐川祐己(神戸)1-1
▼アグレミーナ浜松・高橋優介監督コメント
-ホーム開幕戦、ゲームを振り返って。
「前半は自分たちのリズムが取れませんでした。相手の強度の高さもあり、攻撃のベースがうまくいかなかったように感じました。後半はパスのラインを修正するなどして、押し込む時間が長かった。(就任前に)浜松は公式戦になると元気がなくなると聞いていて、開幕節もそういう傾向がみられましたが、きょうはそのままで終わることがありませんでした。最後まで落ちずに出し切っていくことはできていたと思います」
-相手の3セットに対して2セットで対応。相手のセットに合わせるという考えはあったのか
「特にないです。今の時期は自分たちのペースでやることが大事ですから。これは今、経験しておかないと、シーズンが深まってセットを崩したり、けがで選手がいなくなったら対応が効かなくなります。現時点では7人が軸になっていると思います。そういう意図はあります。今後、3セットで安心して戦えるようになったら、相手のセットに当てることもあるでしょうが、今は自分たち主体の考え方が強いです」
-後半の修正点は。
「開幕節の神戸をみていると、(トップが)下りてくる動きに対して困っていた印象。練習でやっていなかったが、そういう流れに持っていこうとしました。スペースやギャップをついて押し上げていって、機会をみて3-1に戻すという意図でした。もう一つ、個人がパスを出した後に考えちゃうところがあって、動きの連続性が少なくなっていたので、そこを改善しました」
-しながわシティ戦に向けては。
「映像を見ながら対策を考えるが、ゲーム間隔が3週間空くことで、僕らも相手も変わると思います。相手は2試合して、特に開幕節は負けている。3節目は数段いいレベルになってくるでしょう。リーグ戦、特に昇格を考えたときにいい準備をしつつも、削るところはしっかり削らなくては。工夫と割り切りが必要で、それに合わせて攻撃を組み立てる必要があると思います。相手はたぶん3セットで回そうと思えば回せるでしょう。こちらは2セットがベースになります。ゲームをやりながらではなく、事前にいろいろ考えなくてはいけないですね」
▼アグレミーナ浜松・鷲北一輝選手コメント
-ゲーム全体を通じての感想は。
「前半は個人的に入りが良くありませんでした。セカンドボールを拾えていなかった。前半途中から後半にかけて走りを意識しました。出たときは100%やることしかできなかったので、走れなくなる前に声を掛けて替わりました」
-勝ち点1をどう捉えるか。
「決定機はあったのにゴールを奪えなかったのが悔しい。ただ、選手間で話もしたが、戦えるようにはなっていると思います。だからこそ余計に悔しい」
-次節のしながわシティ戦をどう戦うか。
「昨シーズンは点差が開いた負けが2試合続いたが、個人的には苦手にしている気持ちはない。第2節を最低限として、それを上回るよう、集中して練習に取り組んでいきたいです」
▼アグレミーナ浜松・巽優太選手コメント
-試合を振り返って。
「全体的にアグレッシブでアクティブな、お客さんに熱狂してもらえるような試合ができた。相手も激しいチームだったが、ひけを取らずにできたのではないでしょうか。チームとしては現時点でいい状態にあると思います。手応えはありました」
-左のアラが主戦場。
「監督は一人一人、やりたいプレーを尊重してくれています。一緒に出ている選手も、(自分の)やりたいプレー、得意なプレーを理解してくれていて、サポートしてくれたり、助言してくれたりします。自分は新入りですが、リスペクトしてくれてありがたい。きょうはそういう面でも結果を出したくて、点を取れそうな場面もあったのに残念でした」
-ファーストセットの武田選手とは名古屋サテライト時代から一緒にやっている。
「(名古屋サテには)3年間共に在籍し、そのうちの2年間は常に一緒のセットでした。同じ部屋で生活をしていました。お互い切磋琢磨する関係。今年も同じチームでプレーすることになりました。別のセットに出ていますが、彼はイマジネーションが面白い。誰も想像していないようなプレーをします。僕にも『ここだけは彰に負けていないぞ』という部分があります」
-背番号10を田中選手から受け継いだ。
「オーシャンズでも10番を付けるのが目標でした。この背番号を受け取ったからには、チームの顔になりたいと思っています。うれしい半分、新人なので背水の陣という気持ちもあります。決まったときに、このチームのために全てを注ぐという覚悟が定まりました」
▼デウソン神戸・鈴村拓也監督コメント
-試合を振り返って。
「どちらも落ちることがない、締まった内容の好ゲームになりました。1対1でしたが見応えがある試合だったのではないでしょうか。お互いに崩れる、崩せる場面が、特に最後の方にあったし、(神戸は)前半最後にセットプレーで好機もあった。チャンスが少ないゲームでは、そういった所を決めきることが大事だと思います。ただ、ディフェンス面で大きなほころびもなく、選手たちはよくやってくれました」
-前半の3セットから後半は2セットに切り替えたように見えた。
「後半も3セット出してはいました。2セット半、というか。3セットの中で選手を入れ替えたりもしていた。今年はそれができるんです。誰がどのセットに入っても、選手たちは気持ちの面を含め、しっかりやってくれている。そういったことを活用して、勝ちに持っていくのが自分の目指すところです」
-特に前半の守備は狙い通りはまっていたのでは。
「3-1、4-0の大枠で考えたときの、私の考えるフットサルのディフェンスを伝えています。選手たちは距離感などを自分たちで調整してくれている。誰がどういうセットに入っても、相手がどういうシステムだったとしても去年以上にやりきれていると思います」
-攻撃面では、相手陣で早めに起点を作っていた。
「ピヴォが相手の背後に入っていって、長い距離で2枚目がはいっていく。そうすれば相手の走る量も増えていく。その徹底を意識していました。相手を後ろ向きに走らせようという意図でした」
-2節を終えて1勝1分け。この結果の評価は。
「前節の逆転勝ちに続いて負けなかったことは大きいですね。ずっと1位でいたいが、長いリーグ戦なのでなかなかそうはいきません。最後に1位でいるために負けないことも必要。次節の浜田戦はしっかり勝ち点3を取って、2節の引き分けをいい形でつなげたいですね」
2019年9月14日に静岡市清水区の清水総合運動場体育館で行われたFリーグ2019/2020ディビジョン2第7節、アグレミーナ浜松対広島エフ・ドゥは4対2で広島が勝利した。浜松は同会場での初開催を白星で飾れず、リーグ前半を4勝3敗で折り返した。広島は15日開催の横浜対北九州の結果を受けて、2位北九州から勝ち点1差の3位につけた。
「良い時間帯の追加点」の重要性を実感させられる浜松の敗戦だった。浜松は立ち上がりから主導権を握り、5分に野嶋倫の左サイド縦突破から中の磯田剛志が決めて先制。その後もプレスラインが定まらない広島の2セットを相手に、軽快にボールを回した。
10分前後には鷲北一輝、中村友亮、山元優典、日永田祐作のセットが良い距離感でパス交換しながらチャンスを作り、2度の決定機を迎えた。だが、ここで浜松の前に立ちふさがったのが広島のゴレイロ尾関潤だった。的確なポジショニングと反応の鋭さでシュートをはじき、追加点を与えない。試合を終えて振り返れば、この二つのシーンと、16分の中村友亮のカウンター独走からのシュートが右に外れた場面のうち一つでも決まっていれば、浜松は楽にゲームを進められただろう。
こうした展開になると、我慢を重ねた側に流れが傾くのが、フットサルの常。広島は前半の終盤までほとんど決定機が作れなかったが、18分に佐々木諒のミドルシュートが決まり、追いついた。広島は、ファーストセットの富廣洋平、セカンドセットの永井聡の両ピヴォに早めに当てる攻撃を執拗に繰り返していた。同点の場面は右サイドに流れた富廣がキープし、中央の佐々木がノーマークでシュートを打った。浜松はピヴォへのマークは厳重だったが、この場面ではハーフラインを超えたあたりまで進出したフィクソ佐々木への対応が緩かった。
後半は取って取られてで2対2に。緊迫した空気が館内に充満し、非常に良い雰囲気だった。試合が決したのは35分。広島は左CKを三島光太郎がニアに蹴りこみ、武田侑也がゴレイロの前で触ってゴールを陥れた。浜松のマンマークの虚を突いた、広島にしてみれば「してやったり」の勝ち越し点だった。
浜松はすかさず須藤慎一をゴレイロに据えてパワープレーに出るが、淡々としたパス回しに終始し、広島のDFの穴を見つけることができない。4対2で広島が逆転勝ちを収めた。
ともにFリーグで選手として活躍し、日本代表経験もある浜松・豊島明監督、広島・村上哲哉監督の対戦だったが、アウエーチームを率いた村上監督に軍配が上がった。
広島は5勝2敗で折り返し、2位北九州に肉薄した。村上監督は「選手、監督ともに引き出しは多くないが、自分たちのスタイルを貫いて戦いたい」と後半戦を見据え、F1昇格にも意欲を示した。
浜松は4勝3敗。惜敗が続く前半戦を踏まえ、豊島監督は「これで終わりではない。立ち上がる気持ちを強く持って戦いたい」と巻き返しを誓った。
▼広島エフ・ドゥ 4-2 アグレミーナ浜松
5分 磯田剛志(浜松)0-1
18分 佐々木諒(広島)1-1
27分 オウンゴール(広島)1-2
31分 山桐正護(浜松)2-2
35分 武田侑也(広島)3-2
37分 永井聡(広島)4-2
▼アグレミーナ浜松・豊島明監督コメント
-ゲームを振り返って。
「立ち上がり、先制したところまではよかったが、そこから追加点を奪えなかった。ギアを上げた時間帯に追加点を取れず、オウンゴールで悪い流れを引き込んでしまった」
-前半に追加点が取れなかった要因は。
「ポイントはセットプレーだった。フィールドできれいに崩しきるのはなかなか難しい。接戦では特にセットプレーが重要だった。相手は2本決めて、こちらは決めきれなかった。パワープレーの失点は、引き分けではだめだったので仕方がない。対策はしていたが、スカウティング以外の部分で対応が足りなかった」
-後半は、相手のピヴォ2枚に縦パスがよく入れられていた。
「前を向かれてシュートを打たれていなかったが、確かにボールは収まっていて、嫌なところではあった」
-リーグ前半を終えて4勝3敗。この結果については。
「自力優勝が厳しくなったと認識している。だがこれで終わりではない。ここから立ち上がる気持ち、自分たちの目標としているところにどれだけ近づけたいかという気持ちの勝負だと思う。(敗れた)横浜戦、北九州戦も、シュートがうてずにゲームを落としているわけではない。ゲームを決めに行くという強い気持ちと冷静さが必要だ。後半戦も、勝負を決めるゴールを貪欲に、アグレッシブに狙っていく」
▼アグレミーナ浜松・中村友亮選手コメント
-ゲームを振り返って。
「先制して、追い付かれて、逆転され、同点に追いついたところまでは良かった。いい流れもあったが、相手はセットプレーを2本決めてきた。同じ形からやられている。ちょっとしたコミュニケーションのずれが原因だ。特に3失点目は、その前の失点と同じ形だったので、守りのコミュニケーションが取れていればという悔いが残る」
-リーグの折り返しの一戦。前半7試合を振り返っての感想は。
「勝負弱い。接戦で勝てない。(1部から降格したチームということで)相手はどこも向かってくる。(こちらも)絶対に負けないという強い気持ちがあるが、力が入りすぎてフィニッシュの精度が下がっているように感じる。もっと冷静に打たなくては。チームとして、こういうプレッシャーでゲームをやりなれていないところもある。開幕時の目標は全勝優勝だったが、前半の結果を踏まえて、後半は目の前の試合に集中して戦いたい」
▼広島エフ・ドゥ・村上哲哉監督コメント
-勝ち点12で並ぶチーム同士の対戦。試合前は選手にどんな指示をしたか。
「過去は変えられないが、未来は変えられる、という話をした。1巡目最後の試合でコンディションの不安もあったが、選手は高いモチベーションで乗り越えてくれた。成長を感じた一戦だった」
-押し込まれた前半に比べて、後半はピヴォにボールが収まり、ペースを握れていた。
「シンプルに裏に蹴っていくということを徹底するという点では、やり方は変えていない。後半はそれをきちんとそれを体現してくれたということだと思う。前半に追いついたタイミング、後半に自分たちのやり方で逆転できたこと。全てがパーフェクトだった」
-リーグの折り返しで勝ち点15。開幕前の予測と目標と比較して、この結果をどうとらえるか。
「横浜、北九州、浜松との試合がカギになってくると思っていた。このうち、横浜と北九州の試合はホームだったので、最低限でも勝ち点1を得るつもりだったが、かなわなかった。きょうの浜松との試合で勝ち点3を取れたのは、そうした意味でも大きい。選手も自分も経験値が高くないので、スタイルのバリエーションは多くない。自分たちのやり方を徹底して後半戦を戦いたい」
▼広島エフ・ドゥ・三島光太郎選手コメント
-3点目のシーンを振り返って。
「ハーフタイムに、浜松のマンツーマンを外すために、キーパーの前で(ボールに)触ろうと話をしていた。それがうまく行った」
-前半は押し込まれたが、後半はペースを握っていた。
「今までは、試合の途中でうまく行かないとイライラすることもあった。だが今日は、自分たちを信じて最後までゲームができた。これまでのリーグ戦ではできなかった試合だ」
-リーグの後半戦をどう戦うか。
「最初の試合の相手である柏は、かなり戦力補強している。1戦目とは違った展開になるだろう。油断せずに戦いたい。上位の横浜、北九州との対戦は、自分たちのスタイルをしっかり出したい。ケガで離脱中の選手も戻ってくる。チーム全体で勝ち切りたい」
※TEXT & PHOTO :橋爪充
2019年7月5日に浜松市の浜松アリーナで行われたFリーグ2019/2020ディビジョン2第2節、アグレミーナ浜松対トルエーラ柏は5対1で浜松が勝利した。浜松は2017年10月14日の2017/2018シーズンの第21節でシュライカー大阪に4対3で勝って以来のホーム戦勝利。今季開幕2連勝とし、暫定首位に浮上した。
立ち上がりは柏ペース。自陣に軸足を置く浜松に対して、前線の長身ピヴォ樋口岳志へのロングボールを多用して押し上げを図る。府中時代に何度も浜松のピッチを経験している柴田祐輔は、後ろ3枚の位置から巧妙に相手ボックスの中央に入り込み、左右にボールを散らす。
体格を生かした柏の「放り込み」に手を焼いているかに見えた浜松だったが、カウンターの精度の高さを見せて5分に先制。左サイドで相手のワンツーが崩れたところから中村友亮が中に切れ込みシュート。GKが弾いたところをゴール前に詰めた日永田祐作が仕留めた。
浜松は12分に山桐正護が追加点を奪い、15分には再び中村を起点に3点目を奪った。中村は相手4枚の真ん中でボールを受けて巧みに前を向き、瞬間的な加速で前進。左ポストでパスを受けた須藤慎一が難なく沈めた。浜松は野嶋倫のゴールも決まって、4対0で前半を折り返した。
後半も元気よくパスを回す浜松のペース。決定機を複数外したものの、柏の攻撃をCKからの1点に抑えた。約1年9カ月ぶりのホーム勝利。浜松は試合後は、選手、監督はもとより関係者全員が笑顔だった。一部観客からは「ホームで勝ったのを初めて見た」という声も聞かれた。
浜松は強い雨の降る金曜日の夜に集まった1250人を十分満足させたと言える。2部に降格したとはいえ、これだけ顧客満足度の高いホーム開幕戦を提供できたのは、Fリーグ参入後の8シーズン目で初めてだろう。今季は浜松でのホームゲームが3試合しかないだけに、今後も大事に戦いたい。
開幕2連勝だが、随所に見られた寄せの甘さ、横パスのズレは修正が必要。特に前半のロースコアの時間帯は、アラへのパスをカットされてゴール前に持ち込まれるシーンが目立った。後半に少なくとも3回はあった決定機を決め切れなかったのも課題だ。厳しい見方をするなら、このゲームは8対0で終えなくてはいけなかった。
豊島明監督は「前半の山場」とする次節のボルクバレット北九州戦について、「勝てば一気に波に乗れると思う。しっかり勝って戻ってくる」と話した。
▼アグレミーナ浜松 5-1 トルエーラ柏
5分 日永田祐作(浜松)1-0
12分 山桐正護(浜松)2-0
15分 須藤慎一(浜松)3-0
16分 野嶋倫(浜松)4-0
24分 柴田祐輔(柏)4-1
38分 萩原洪拓(浜松)5-1
▼アグレミーナ浜松・豊島明監督コメント
「立ち上がりに攻め込まれてしまったが、早い段階で点を取れてしっかりゲームを作れた。一方で、1失点は防がなくてはいけなかったし、もう2、3点取れた。(こうした点については)選手に要求していく。ポジティブに考えれば、ここでパーフェクトなゲームしてしまって山場の次戦にゆるんでしまうより、多少ダメな点があった方がピリッとした空気が作れる」
-前半はずいぶん慎重な立ち上がりだった。
「相手の出方を見てやっていこうと話したが、ボールにプレッシャーがかかっていなかった。(大きく)蹴られたり、12番(林賢治選手)に右サイドを2回抜かれたりしたので、セット交代時やタイムアウトで9番と12番のケアをしようと話した。2人を抑えることで、グッと流れを引き寄せられた」
-相手は14番の柴田選手が中に入りこんだり、9番樋口選手がロングボールを収めたりして、攻撃の起点になっていた。
「ストロングポイントは9番、12番、14番だと思っていた。特に9番は想定以上に身長が高く、ロングボールが収まってしまう。でも、そこは入っても仕方がない。ただ、相手は1枚しか抜けてこないので、ピヴォをマンツーマンで抑えて、シュートや(決定的な)落としを防げればいいと思った」
-雨の金曜日夜にも関わらず、1250人が駆け付けた。
「ありがたい。今季のチームスローガンに掲げているが、チームと組織、サポーター、スポンサーが四つの柱。クラブに関わる全ての人々が同じ目標に向かって突き進んでいくという一体感を高めたい。今季は集客も含めた浜松の強みを見せる。こんなにお客さんがいるし、良いゲームができているという姿。それを一つ一つ積み上げて、もう一度あの舞台(F1)に戻れれば理想的だ。ぜひF2優勝と昇格を達成したい」
-優勝と昇格に向けて、次節ボルクバレット北九州戦は山場となる。
「F1は試合数が多いので、修正のための期間が短くならざるを得ず、精度が落ちてしまう。今季はF2に落ちてしまったが、ゲームとゲームの間に準備期間がしっかりあるため、ゲームに向けての精度を上げていける。次戦は勝てば一気に波に乗れると思う。しっかり勝って戻ってくる」
▼アグレミーナ浜松・中村友亮選手コメント
「前半の相手の時間帯をうまく我慢できた。いい時間帯に3点取れたのがよかった。ただ、前半の終わりに底辺でミスが出てしまった。後半は気持ちの余裕が出てしまって、決められず、逆にゴールを許した。(相手に)『浜松は強い』と思わせるために、もっと得点を重ねたかった」
-立ち上がりは仕掛けを封印していた。
「ビデオでは確認していたが、対戦したことがなかったので、相手の特徴について分からないところがあった。探りながらのゲーム運びだった」
-相手を突き放した3点目がゲームの流れを決定づけた。
「相手の間に斜めに抜けたら、(田中)智基さんからむちゃくちゃいいボールが来た。本来は一発で僕が決めていなくてはいけない。1回(シュートを)打って外れたが、(須藤)慎さんが良いポジションにいたのでパスした」
-大勢の観客がゲームを見守った。
「子どもたちも含めて、大きな声援をもらって本当にありがたい。選手同士の指示が聞こえないほどの大きな応援だった。カテゴリーが落ちてもこうやって見に来てくれる人がいる。皆さんと1年でF1に上がるところを共有したい。結果にこだわってやるだけだ」
▼トルエーラ柏・松田大次郎監督コメント
「浜松のホーム開幕戦ということで、会場の雰囲気がとても良かった。良い環境で試合をやらせてもらった。負けてしまったが、開幕2試合目でまだチームを作っている段階。選手はよくやってくれたと思う」
-立ち上がりはペースを握っていたが、ミスから失点を重ねた。
「選手にはどの位置で何をするかについて話をしているが、まだ改善しなくてはいけない。ただ、これは僕がアプローチするべき点。選手は一生懸命やってくれていた」
-攻撃時に柴田選手が相手4枚の中央にポジションを移す場面が多く見られた。
「ピヴォを2枚にするという意図はなく、自然にああいう形になった。相手の真ん中でボールを受けようというのは狙いだった」
-2連敗となったが。
「悪い方向には進んでいない。今日は負けてしまったが、だらだらとした試合はしていない。ただお金を払ってもらっている以上、勝利を目指す必要がある。チームとして、クラブとして結果がほしい」
※TEXT & PHOTO :橋爪充
DUARIG Fリーグ2018/2019ディビジョン1開幕セントラル2日目の第1試合は、シュライカー大阪がFリーグ選抜を6対2で下した。
Fリーグ選抜は所属元が名古屋オーシャンズサテライトの北野聖夜、水谷颯真、瀧澤太将にアグレミーナ浜松の新井裕生が加わったセットでスタート。大阪は元ROBOGATOの加藤未渚実、アルトゥール、チアゴ、小曽戸允哉、柿原聡一朗という布陣で開幕戦に臨んだ。
大阪はFリーグ選抜の積極的な仕掛けを受け止めると2分、相手陣左サイドで小曽戸がプレスをかけて得たキックインから、アルトゥールがチアゴへのピヴォ当てで先制ゴール。3分にはチアゴがPKを決めて主導権を握る。
ほぼミスなくパスを回す大阪に対し、素早いプレスに自由を奪われたFリーグ選抜は決定機を作れない。大阪は8分にセットプレーのこぼれからチアゴ、9分には前線からの激しいプレスからGKが苦し紛れに出したボールをアルトゥールが難なく沈めて4点差をつけた。Fリーグ選抜は13分に、新井が自陣から超ロングシュートを決めて1点を返すも、大阪は18分、加藤の中への仕掛けから数的有利を作り、右の小曽戸、左のチアゴでフィニッシュ。5対1で前半を終えた。
後半は大阪がペースを落とした感もあり、Fリーグ選抜がドリブルで敵陣に持ち込むシーンも増える。Fリーグ選抜はラインを下げて陣形をコンパクトにし、相手の裏のスペースを狙いに行く。30分には鬼塚祥慶が自陣右サイドから力強いドリブルで持ち込み、自ら決めてチーム2点目をゲットした。
Fリーグ選抜は残り4分からGKを坂桂輔に代えてパワープレーを敢行するも実らず。若武者たちの初陣は、フットサルを知り尽くした大阪に屈する形となった。ただ、場内は時間を追うごとにFリーグ選抜の支持度が上がっていった。後半のチャンスシーンには、何度となく拍手が送られた。前半立ち上がりの失点は、大阪の圧力に負けたミスから生まれたもの。これが徐々に改善されていけば…という期待は感じさせた。
Fリーグのスピードやパワーに順応した彼らの1年後の姿を見たい。
▼シュライカー大阪 6-2 Fリーグ選抜
2分 アルトゥール(大阪)1-0
3分 チアゴ(大阪)2-0
8分 チアゴ(大阪)3-0
9分 アルトゥール(大阪)4-0
13分 新井裕生(Fリーグ選抜)4-1
18分 チアゴ(大阪)5-1
21分 小曽戸允哉(大阪)6-1
30分 鬼塚祥慶(Fリーグ選抜)6-2
▼Fリーグ選抜・高橋優介監督コメント
前半と後半で差があったゲーム。点差があったということで、後半は相手のプレー強度が落ちる結果になった。(そうした要因があるので)前半、後半(を分けて)良かった悪かったと評価しない方がいい。前半の入り3~4分で失点しているが、最初は悪くなかった。だが、自分たちが押し込まれてぐいっと来られる相手の対応がうまくできていなかった。ゲームの流れを失った要因だと思う。
-2失点した直後の早いタイミングでタイムアウトを取った。どんな指示をしたのか。
自分たちがやるべきことを確認した。押し込まれることは分かっていたが、ボールに対する執着心が出ていなかった。そこを出さないとどんどん(点差が)広がる。相手よりゴールを多く取る、という根本が欠けていると感じたので、気持ちの部分でどうするのか、誰がやるのかを確認した。
-得点した鬼塚の評価は。
前に行くという点では、チームで一番能力が高い。ゴールへの意識も同様だ。
▼Fリーグ選抜・三笠貴史選手コメント
点差が開いてしまった。戦術や個人の技術より、勝つんだという強い気持ちでピッチに立てていなかったことが問題。技術的に劣っている部分はあったが、戦える部分はある。それを最初から持ってこないとそもそも同じ土俵で戦えないと思った。
-今後、チームをどう高めていくのか。
ゲームの入りがいつも悪い。普段の練習のフィジカルやスピードとまったく違ってしまっている。勝つためにピッチに立っていても、入りでビビってしまうと根本がぶれてしまう。
▼Fリーグ選抜・新井裕生選手コメント
-ゴールシーンを振り返って。
(ボールを保持して)パッと見たらGKが前に出ていたので打ったらうまくいった。状況も状況だったので素直に喜べなかったが、ここから追い上げていければという思いがあった。
-試合全体の印象は。
攻撃面の入りは悪くなかったが、守備でチアゴ選手やアルトゥール選手、加藤選手のところで後れを取ってしまった。体で勝てなくても、あと1歩足を出す、セグンドでスライディングして止めるなどできたはず。そういうところは足りなかった。
空回りしていたのか、ビビッていたのかわからないが、一人一人がもっと守備で体を張る必要があった。若くて経験もない僕らは、相手より倍ぐらい走って頑張らないと、「いい勝負」にすら持ち込めないと思う。
▼シュライカー大阪・比嘉リカルド監督コメント
前半からいいリズムを作って4点差をつけられた。(このまま)止まらないように、同じリズムでプレーするように指示した。良い試合の運び方だったと思う。開幕戦で勝利ができて良かった。
-攻撃面で昨年からのプラスアルファは。
練習ではパターンではなく、システムに入れるようにしているが、まだ難しい。いいタイミングで、試合に使えるようにしたい。
▼シュライカー大阪・小曽戸允哉選手コメント
リーグを戦う上で開幕戦は非常に大事。勝ち点3を取ることだけを考えた。実行できてよかった。
-Fリーグ選抜への印象は
若い選手が多く、よく走る。技術も高い。ただ、きょうはチアゴや相井など体が強い選手とのマッチアップで耐えられなかった。そこで(大阪は)チャンスをつくれた。相手(Fリーグ選抜)は難しくなってしまった。
※TEXT & PHOTO :橋爪充
DUARIG Fリーグ2018/2019ディビジョン1開幕セントラル2日目の第2試合は名古屋オーシャンズがアグレミーナ浜松を9対0で一蹴した。
序盤から猛攻を仕掛ける名古屋は1分、右CKから中央のヴァルチーニョがゴール左上にミドルシュートを決めて先制。2分にはルイジーニョが右のヴァルチーニョに振り、折り返しをファーの吉川智貴が沈めた。3分、右CKをニアでペピータが合わせて3点目。6分にはセンターサークル付近で受けた星翔太が1トラップでDFをかわして直進しゴール。10分には左サイド深くに持ち込んだ八木聖人が粘り、最後は平田ネト・アントニオ・マサノリが左足で蹴りこんで5点目。この時点で、すでに勝負あった。
浜松は自陣の深い位置でボールを保持するが、最初のパスがつながらない。素早くコースを切る名古屋のディフェンスにことごとく引っかかり、ルーズボールもほとんど拾われてしまう。時折、ライン際を野嶋倫が攻め上がるなどして敵陣にボールを持ち込むが、名古屋のディフェンスを崩すにまでは至らない。
後半も立ち上がりに名古屋が加点し、リードを広げる。残り6分には、名古屋平田の退場で浜松が数的優位の時間帯を迎えるが、名古屋は星龍太、安藤良平、吉川が集中した守りを見せ、得点を許さなかった。
名古屋は外国人選手と、日本人選手ががっちりかみ合い最高のスタートとなった。浜松は前後半とも激しいプレスを見せる名古屋に主導権を奪われ、最後までペースをつかめなかった。開幕戦の0対9というスコアは2016/2017シーズンにフウガドールすみだを相手に喫して以来。次節は同じように開幕戦を落とした湘南ベルマーレが相手。まずは守備の立て直しを図りたい。
▼名古屋オーシャンズ 9-0 アグレミーナ浜松
1分 ヴァルチーニョ(名古屋)1-0
2分 吉川智貴(名古屋)2-0
3分 ペピータ(名古屋)3-0
6分 星翔太(名古屋)4-0
10分 平田ネト・アントニオ・マサノリ(名古屋)5-0
25分 八木聖人(名古屋)6-0
30分 吉川智貴(名古屋)7-0
36分 橋本優也(名古屋)8-0
37分 ルイジーニョ(名古屋)9-0
▼浜松・豊島明監督コメント
立ち上がりに失点を重ね、後半も早い段階で失点してしまった。ペースをつかめなかった。チャンスがなかったわけではないが、決められなかった。
-シーズンを戦う上での手応えは得られたか。
きょうの試合からは感じられない。ただ、奮起して1点を取ろうという気持ちは最後まで見せた。攻撃の形はできていた。そこでゴールが生まれれば、もっと競った試合になっていたはずだ。修正する部分を見極めていく。
-新入団の山田凱斗選手の評価を。
なかなか思い通りのプレーができなかっただろう。だが18歳にして、ほかの選手と分かり合える力をもっている。この素材を生かすも殺すも、わたしの采配次第だと思う。決定的なところが決められるかが課題だ。
-シーズンを通してどんなチームにしていくか。
きょうは、準備したことをさせてもらえなかった。真っ向勝負を挑んでこの結果だから、すっきりしている。シュートまでいく過程は見せられた。昨シーズンの順位(8位)を超えるための形は多少見せられたと思う。今後は、しっかり勝負を決定づけるチームにしていきたい。
▼浜松・松浦勇武選手コメント
前半の入りで失点しまったことが響いた。ボール回しが後手後手になり、攻撃に出た時はきつい状況になってしまった。前半の最後や後半の中盤など、こちらのペースになった時間帯もあったが、このスコアは恥ずかしい。第1節なので、下を向いている時間はない。反省すべき点を反省して、次につなげたい。
▼浜松・山田凱斗選手コメント
対戦して、オーシャンズの強さを改めて感じた。スピード感や強さ。さすがにFリーグを引っ張って何度も優勝するチームだと思った。
-初めてピッチに立った時の思いは。
目標にしていた舞台だったから(うれしかった)。でも、何もできなかった。このままでずっといるのではなく、シーズンを通して高めていきたい。来週も試合もある。自分ができることをやっていくしかない。
-オーシャンズの強力な外国人とのマッチアップの感想は。
胸板が厚く、フィジカルが強い印象。イライラさせたらこっちのものと思って強く行ったが、うまくはがされることもあった。さすがに上手い。
-前後半それぞれに決定機があった。決めるために必要なことは。
あの場面はどちらもゴレイロの動きは見えていた。味方の動きを見て、そちらにつけるという判断もできればよかった。きょうは大差で負けてしまったが、9失点を0に近づけ、0得点を1でも、2でも、少しでも多く積み重ねたい。そのことが勝利につながる。
▼名古屋・ペドロ・コスタ監督コメント
私たちが主導権を握れたゲームだった。選手のがんばり、努力がある中でゲームをつくることができた。ただ全部が良かったわけではない。前半は終盤に落ちたところもあり、相手にチャンスを作られた。ハーフタイムには、そのあたりを話し、リセットした。後半は立ち上がりから得点が生まれ、強い攻撃力のあるフットサルができたと思う。長いリーグ戦で最初の1歩を力強く踏み出せた。
-8人がゴールを決めていることの意義とは。
多くの選手が点を取れたことは、攻撃的なチームを作り上げていく中で非常に大事。誰でも得点が取れるというイメージは相手に恐怖を与える。チームにとってプラスに働く。チームがどうやって勝っていくかが大事であり、誰が取るというよりもまずは勝つことだ。
▼名古屋・星龍太選手コメント
開幕戦に勝てた。リーグ戦の1試合を取れてほっとしている。だが勝った試合こそ、細かい修正が必要になってくる。きょうは完ぺきな試合運びではなかった。もっと良くするために練習する。
-後半の数的不利の時間帯も、零封する意識が強くうかがえた。守っているときの心境とは。
いくら点差が離れていても、全力をつくすことが大事。4対3の場面は、すべての相手に対して起こる状況ではない。きょうの2分間は、これから起こるかもしれない4対3に備えた(という意味もあった)。試合ではあるが、頭を使った。
※TEXT & PHOTO :橋爪充