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ちょうど2ヶ月前の昨年11月16日、エコパアリーナで行われた名古屋オーシャンズと日本代表候補のトレーニングマッチの残像が筆者の記憶にいまだ残るこの時期に、日本代表候補の新たな対戦をまったく同じピッチで再び観戦する機会に恵まれた。

日本代表候補 vs 田原フットサルクラブ

フットサル日本代表候補によるトレーニングキャンプがエコパで頻繁に行われるようになって以降、常にその可能性を探り熱望していた静岡県勢とのトレーニングマッチが現実となる日が訪れたのだ。(2012年1月18日実施)

日本代表候補

田原フットサルクラブ

まずはこの試合に向けたちょっとした裏話から。

トレーニングキャンプ中でのマッチメイクの可能性を打診されたのは1週間前の事。「(地域リーグレベルの)どこかと試合ができないか?」と言うものだった。そして「出来れば最終日、水曜の午前中がベスト。どうしても無理なら火曜の夜、さらに複数チームの混成も検討の余地あり。」と地域のチーム、選手に配慮した問い合わせでもあった。

ただ、代表側が最優先したい「水曜日・午前」での対戦の可否について短時間で回答を用意する必要から、まずはFリーグ準会員加盟の正式発表などチーム体制を整えつつある田原FCに打診をさせていただいた。

もちろん現時点で田原FCに所属する選手はこれまでの活動となんら変わることがない、それぞれが仕事を抱えてのチーム活動であるわけで、果たして何名の参加が可能であるのか不安もあった。

しかしながらその回答は「新監督ゼゴも含め、ほぼ全員で対戦させて頂きます。」と言う事だった。
もちろん試合当日には、ゼゴ氏(アグレミーナ浜松の監督に就任することが発表されている。)も含め日曜日に行われる東海リーグ開催日以上の選手の出席率を実現してくれた。

静岡県内の地域リーグ(東海リーグ)参入チームと言えば昨季・今季と連覇を果たしたデリッツィア磐田が存在するわけで、筆者としても代表候補との対戦は非常に興味を抱かせる組み合わせではあった。

後日、デリッツィア磐田の北本代表には事の経緯をご説明させて頂きはしたが、やはり対戦のチャンスを可能な限り選手と話してみたかったと言うのが本音ではあろう。
代表候補との対戦がどれだけ魅力があり、稀なチャンスであったかは言うまでもないからだ。
それでも北本氏の「田原さんには有意義な時間にして欲しい。」との言葉に少しの安堵を感じたとともに、対戦チーム決定への過程にご理解をいただいた事に感謝したい。

前置きが長くなってしまったが、当日のトレーニングマッチに話を移そう。

折りしも、前週の金曜日には田原FCが母体となりFリーグへの歩みを進めているアングイア浜松がFリーグ準会員加盟記者会見を行ったばかり。 さらに直前の日曜日にはあの「キング・カズ」こと静岡が誇る三浦知良選手のFリーグ出場が、フットサル界のみならず日本中のお茶の間の話題となる中、会場にはいつもは目にすることのない地元新聞社の記者の姿も見られた。

代表の先発は北原、小曽戸、星、小宮山のフィールド4人に川原がゴレイロ。対する田原のスタートはフランキと松本のFを経験した二人に蓮池と萩原、ゴレイロには杉本がピッチに立った。

1対1での強さを見せた星。

代表のファーストセットとして出場した中では星の動きが目立った。前線で基点となることはもちろんだが、1対1での強さや運動量、スピードなど、代表全体の中でも優れたパフォーマンスを見せていた。
今回のトレーニングキャンプへは急な招集だったようだが、海外でプレーしている自覚が強く現われていたのかもしれない。

その星がこの試合最初のゴールを決める。

開始から5分、それまでも比較的高い位置からのプレスを行っていた田原守備陣系がさらに代表陣地深くまでそのラインを上げた。
蓮池が右サイドでボールを持つ星に厳しく寄せる。が、星は落ち着いてボールを裁きプレスを回避、そのままスピードに乗ったドリブルで田原ゴールに迫る。
この時点で星に突破を許した蓮池や、パスコースを消しに行っていたフランキや松本は戻りきれず事の成り行きを見守るだけだった。

星は最後に対応した萩原の寄せを意識してか、第2PK程の距離からシュートを放ちこれを見事に田原ゴールへ突き刺した。

この日の代表は、ミゲル監督がトレーニングのメニューとして課していた、ピヴォを意識した組み立てをテーマとしていたようだが、このシーンは星の突破力とスピード、そして決定力がゴールを生んだ。

一方の田原ではフランキの気持ちの高ぶりが印象的だった。

今季のFリーグ序盤にはデウソン神戸に所属していたフランキ。この試合に臨む意識はチームの誰よりも高かった。

開始早々、自軍ゴレイロ、杉本の中途半端な対応に激を飛ばすなど、時折、見方とのコンビネーション不足にイライラをあらわにする場面もあったが、やはりボール際での強さを持つ彼が気持ちの面も含め攻守にわたりこの日の田原の中心だったと言えるだろう。

発破をかけられたその杉本は4失点を許すものの、数多くのピンチを身体を張ったセーブで凌ぐ活躍を見せた。

その後、代表は原田、ラファエル、滝田、村上の布陣へ。
このセットでは、ラファエルが得意とする右足でのシュートフェイントからのカットインの切れ味に魅せられた。
ドリブルからの切り返し、そしてシュートまでのスピードに乗った一連のプレーは、大げさではなく「一瞬、ラファエルが消えた!?」と思わせる程だ。

鋭い切込みからシュートを放つラファエル。

このセットでは村上も左サイドから再三シュートを放ち田原ゴールを脅かすが、守る田原も集中した寄せと杉本の好守で追加点は許さなかった。

左サイドからシュートを放つ村上。今回のキャンプ視察中に「今年もよろしくお願いします。」と声を掛けてくれた。その際に、その時点で週末に迫っていた名古屋オーシャンズとの大一番に話が及んだが「僕らはやりますよ!見ていてください!」とその意気込みを語ってくれた。その言葉どおりオーシャンアリーナで行われたFリーグ第24節で王者を倒した。

田原は萩原に代わり石野、蓮池に代わり向島がピッチに立つと、その代わった二人が同点ゴールを演出した。

向島と石野のコンビネーションでボールを運ぶと、右サイドから石野がゴール正面の向島へパス。向島がこれを巧く押し込み川原が守る代表ゴールのネットを揺らした。

川原を振り返る向島。

田原の1点目のアシスト役となった石野は、この日最もドリブルでの仕掛けでチャレンジしていたように思う。

その後、代表は高橋、木暮、完山、渡邉のセットへつなぐが、結局、前半はこの1点ずつの応酬で後半へ折り返す事となる。

前半に田原が見せた自陣の低い位置からでも短くボールをつなぐ攻めは効果的だった。

4人が連動しディフェンスの隙間隙間に基点をつくりワンタッチ、ツータッチで小気味良くボールを動かす。
代表ディフェンスは、その小さなボール回しに対しプレスの掛けどころがつかめず、さらにディフェンスの隙間に基点を作られることを嫌い意識が中央に集まると、ワイドへのやや長いパスで突破を許す事が多かった。

後半に入っても田原のプレースタイルは変わらない。代表のハイプレスに対しても、単純なロングフィードでの回避はほとんど行わず、ゴールクリアランスからでさえペナルティエリアのわずか外へボールをつなぎ4人が連動する。このプレーこそ自分達のスタイルを示したと同時に実戦の中でのチャレンジだったように思う。

ゼゴ氏が始めて指揮をとる試合でもあった。

だが、前後半25分ハーフと通常より5分長い試合時間が田原の運動量を徐々に奪う。自陣ゴール前から短くつないで展開する試みで、わずか一人でも足、もしくは思考回路が止まってしまうことは、即、失点を意味する。
案の定、後半の3失点はどれも自陣ゴール前でのパスミスや連携ミスに端を発するものばかりだった。

後半開始時点の代表は小宮山、木暮、高橋、原田、ゴレイロには藤原が入った。
一方の田原は前半の入りとまったく同じ5人でスタート。

後半2分、田原陣内高い位置でボールを奪った代表は、原田が左サイドに持ち込みゴレイロを引き付けてからゴール正面へ走りこんだ木暮へ正確にフィード、木暮はほぼがら空きのゴールへ蹴り込むだけだった。

木暮が入ったセットでは、スペースの作り方やボールを引き出すポイントなど、他のセットにはない(効果的な)何かが見られた。それこそが彼の存在感だろう。

さらに後半7分には北原が、後半23分には稲葉が、やはり高い位置でのボール奪取の流れから決めトータル4ゴール。

田原も後半12分、フランキの仕掛けからのこぼれを金城が蹴りこみ2-3と追いすがる時間帯があった。
これ以外にも田原にはチャンスがあったが、シュートの決定力や決定機への最後のパス1本の精度に正確性を欠きゴールには結びつかなかった。

フランキの仕掛けからこぼれ玉を抜け目なく決めた金城がガッツポーズ。

出番を終えた某選手。ウォーマーに身を包みモップ係を担当!?

戦況を見つめるミゲル監督。

終了後は両チームの全選手が整列。全員と握手してトレーニングマッチを終えた。

試合後のミゲル監督とゼゴ氏。

50分間のプレーイングタイムで行われたこの試合、結果として残った4-2のスコアをもとに代表側についても田原側についても、その出来不出来を云々する事はあまり適当ではないだろう。

代表側については、明らかに各選手のフィジカルが低下していることが月曜日のキャンプインからも感じられた。
Fリーグも終盤を迎え、これまで以上に最終順位を意識した凌ぎを削る戦いが続いている事や、本拠地→試合会場→エコパへの移動の負担が重なっている事もあるだろう。

さらに怪我や体調不良でメンバーの入れ替わりが発生し、ほぼ月1回と定例化しているトレーニングではあるものの、いつもとは違うセットでの連携が求められてもいた。

それでも技術が高い選手の集まりなのだから、ゴールだけを目指しがむしゃらな攻めを行えば大量得点にもつながったかもしれない。ただ、監督の意図をピッチでより正確に再現しようとする試み、つまり練習メニュー通りの組み立てにトライする事もトレーニングマッチでは必要だし、そこでの課題を次のキャンプへ持ち込みながらチームとして成長していくものではないだろうか。

ミゲル監督が重要視するセットプレーに迫力を感じなかったこの日の代表。練習には多くの時間を割くが、実戦形式では様々な課題が見つかった事だろう。

田原側については、クワトロ・システムの考案者とも呼ばれるゼゴ氏のアグレミーナ浜松への監督就任発表はあったものの、実際に田原の練習に合流したのはわずか数回程度とのこと、その戦術やオプションのすべてを選手側に伝えているわけでもなければ、選手側の理解もまだ不十分な段階であろう。
さらに東海リーグも終了、全日本選手権ではすでに県大会で敗退と公式戦へのモチベーションについてだけ言えば「ほぼゼロ」。それだけに今回現実となった代表とのマッチメイクへ注ぐ「戦う気持ち」は相当大きなものだったに違いない。この日(休みを取ってまで)参加した選手の数がその気持ちをあらわしていたと思う。

そして「代表に善戦」の印象を与える試合が出来た事も、その気持ちの支えがあったからこそではないか。

さらに、Fリーグ各チームの主力級が顔を揃える日本代表候補とこのタイミングで対戦できた事は、これから目指すチーム作りのための貴重な経験となっただろう。

ベンチも含め全員が貴重な経験をしたはずだ。

平日にもかかわらず、田原へ熱い声援を送ってくれた仲間達に挨拶。

いずれにしても、実戦での戦術確認や選手間の連携などは、どんな練習メニューにも代え難い貴重な時間だ。
この日対戦した代表と田原、どちらにとっても意味のある50分間だったと確信している。

最後に、代表候補とのトレーニングマッチという貴重な機会を与えていただいた代表スタッフ、監督、選手のみなさんに感謝するとともに、静岡県フットサル連盟としても御礼を伝えさせて頂きたいと思います。

本当にありがとうございました。

※以下、フォトギャラリーにて試合の様子をご覧ください。

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