今年の東海選抜大会、第1試合は昨年とまったく同じカード「三重-愛知」で幕を開けることとなった。
ちなみに東海選抜大会は今年度を含め、静岡県開催となってからの3大会すべてで、初戦の対戦カードがまったく同じ組み合わせとなる。これは東海代表の1枠を決めるためのトーナメント戦において、前年度の成績を元に「1位-4位」「2位-3位」の準決勝(初戦)を行うことが定例化されているからだ。
さて、その第1試合だが三重県選抜のベンチには昨年度の全国準優勝を経験したメンバーがずらりと顔を揃えた。
一方の愛知県選抜は、昨年度のこととは言えわずか数ヶ月前の長野オープン(※大会については後述)で全国優勝を果たした選手を中心に、数名のベテラン勢を含めた編成で臨む。
他県同士の一戦ではあるが、筆者にとって非常に楽しみな対戦である事に疑いはなかった。そしてその内容も期待にそぐわぬ非常に白熱した攻防がタイムアップのその瞬間まで繰り広げられた。
キックオフからアグレッシブなプレスと意欲的にゴールを狙う姿勢を見せた愛知県選抜は、三重県選抜の今季のキャプテン本渡幸一に先制点こそ許すもの直後に山本雄志が同点ゴール、そして前半なかば過ぎには最後尾でボールを保持した愛知のキャプテン川畑良介の超ロングシュートが決まり2-1と逆転した。
このシーン、相手陣地、三重県選抜のベンチ前を駆け上がる選手に川畑自らが視線を送り、三重県選手のすべてに「裏を取るパスを出すよ!」を意識させた。
そして、三重県選抜のゴレイロ森恵輔がそのスペースを埋めるべくエリアを飛び出そうと起こしたアクションの逆を突き、一蹴されたボールは川畑の目論見どおり、「味方選手」ではなく「三重県ゴール」へ見事に吸い込まれた。
川畑の「視線のフェイク」が生み出した鮮やかなゴールだった。
このゴールでベンチも含めチーム一体となった盛り上がりを見せた愛知県選抜、「これで勢いづくか!?」と思われたが、そこは経験豊富な三重県選抜、木村雄一→日下敬夫のギャングラインであっさり同点に追いつくと、続けざまに三重のU-23年代の中心選手、松山竜二が右サイドを上手く抜け出し、愛知ゴレイロの遠藤恭史との1対1を落ち着いて決め再び三重県選抜に1点のリードをもたらした。
3-2、三重県リードで折り返した後半、前半立ち上がりに見られた愛知の積極さが影を潜める間に峯山宗丈、石川哲也の連続ゴールで5-2とし「やはり三重県圧勝か!?」を感じはじめた試合残り5分、愛知県選抜の勢いが復活し激しく三重県ゴールを攻め立てる。
そして浦上浩生、近藤友治のゴールで1点差まで詰め寄った後も、「あとわずか!」のシーンを作り出す愛知県選抜。
試合最終盤までお互いがファールカウントを5個まで数える激しい凌ぎ合いが続いたが、最終的には現在の東海王者、三重県選抜が若い世代中心の愛知県選抜を何とか振り切った。
「相手にペースを渡してはいけない時間帯への対応」そして「取れる時間に確実にゴールを奪う決定力」など、試合の流れの掴みの上手さが、若い愛知県選抜の「むらのある勢い」を制したゲームだった。とは言え、終盤の愛知県選抜はオーバーエイジとして加わった近藤友治を中心に三重ゴールを奪う事へ凄まじいエネルギーを発揮した。
そして愛知県フットサル連盟が年間を通して行ってきたU-23年代によるチーム編成での活動の成果をはっきりと感じたゲームでもあった。
後日、愛知県選抜の田中勝利監督に話を伺った。
▼このチームの活動については?
・・・「U-23としてかなり長く活動させてもらっています。名古屋オーシャンズのサテライトとロボガトのメンバーが中心ですが、サテライトからの何名かはトップ昇格もありチームを離れています。年度末の長野オープンで結果を出せた事は、何よりも選手にとって大きな自信になっていると思います。また、エスポラーダやアグレミーナといったFリーグ勢とトレーニングマッチを行うことが出来た事もチームの成長過程では大きかった。その勢いでこのフル選抜にも臨み、やれる自信はあったのですが、三重の上手さ、経験値の高さにやられてしまいました。」
▼試合を振り返ると?
・・・「前半立ち上がりは、思い通り前からのプレスを効果的に発揮できましたが、選手のローテーションなどでピッチ上のエネルギーの持続にやや不安な時間が出来てしまった。後半の立ち上がりもそうですが、選手個々のフィジカル的な耐久時間を自分自身が把握しきれず、そこを三重に突かれてしまったかな、と。」
▼残り5分の猛攻は見事でしたが?
・・・「終盤は選手もやるしかない事を再確認してくれました。前からガンガン行く若いセットで1点。ベテランの近藤を軸にした流れを見極めてから仕掛けるセットでも点が取れました。若い世代には、その近藤や西森さん(チーム最年長)の起点になる動きを見て感じて覚えて欲しいと思います。試合巧者との対戦では勢いだけではどうにもならないものがある。ベテラン勢のその駆け引きを吸収してくれればさらに成長できると思います。結果は残念でしたがよい経験が出来ました。」
自らも現役プレーヤーとして高いレベルでピッチに立てるだけに、ベンチワークでのもどかしさも感じてはいたようだが、これまで続けてきた若い世代を中心とした活動での成果は感じているようだ。
最後に、自らも選手としてピッチに立ち先制点を奪った岐阜県選抜との3位決定戦を振り返り、
・・・「本当は監督がピッチに立つべきではないかな、とも思っていました。ただ、若い世代にピッチに立った選手の責任感や戦う姿を見せたかった。Fリーグ勢との対戦でも点を取っています。もちろんしっかりと準備していますしやれる自信はありましたからね。」
と、今季、選手として戦うための自信に溢れた言葉を聞く事も出来た。1980年生まれと決して若くはないが、優れた身体能力と正確な技術で対戦相手を翻弄する姿を筆者も何度となく目にしている。
そんな彼がピッチの上で活躍する姿を一年を通して見てみたいと思う。
さて、冒頭に紹介している「長野オープン」、長野県フットサル連盟主催による、U-23年代の選抜チームのための全国規模の大会だ。
愛知県U-23選抜が優勝を果たした今年3月の大会結果などの詳細は長野県フットサル連盟公式サイトにて見ることが出来る。
▼長野県フットサル連盟 2012第06回長野オープンU23選抜フットサル大会結果
http://www.nff.gr.jp/reinforcement.html
そして筆者はそのサイトの中にこんな記述を見つけた。
第07回長野オープンU23選抜フットサル大会
2013年02月09日(土)~11日(月) 南長野運動公園,戸倉体育館
次の大会についてのスケジュールの告知だが、静岡県フットサル連盟の年度のスケジュールを見ても特に大きな事業との重複もない時期での大会となるようだ。
静岡県フットサル連盟としても、この大会へ向けた年間を通した活動は出来ないものだろうか?
◆得点経過(※公式記録による)
▼前半
6分→三重:本渡幸一(11)
7分→愛知:山本雄志(5)
16分→愛知:川畑良介(13)
18分→三重:日下敬夫(8)
18分→三重:松山竜二(18)
▼後半
28分→三重:峯山宗丈(4)
30分→三重:石川哲也(9)
35分→愛知:浦上浩生(16)
39分→愛知:近藤友治(10)
※以下、三重県選抜 vs 愛知県選抜の試合の様子をフォトギャラリーにてご紹介いたします。どうぞご覧ください。