フットサル日本代表のトレーニングキャンプが久しぶりにエコパアリーナにて開催されることとなった。
これまでにも幾度となくエコパを会場に行われてきたこのトレーニングキャンプだが、1年ぶりそしてワールドカップ終了後に新たに招集されている選手のトレーニングを初めて見ることができるので、スケジュール初日の夕方、エコパアリーナに出掛けて行くことにした。
事前にご連絡を取らせていただいた代表スタッフの方より「練習を行うピッチ1面の事前設営」のお話も伺っていたので、少し早めに到着した私同様、トレーニング視察に来ていた数名の女性陣(←連盟のお手伝いスタッフの方々です。)と共にラインテープ張りとゴールとベンチの設置のお手伝いをさせていただいた。
筆者はこれまで、日本代表選手自身がゴールを運び、ラインテープを張りながら会場準備を行う姿を見てきた。
Fリーグが開始されて6年が経ち、試合を行うピッチ、会場の環境も素晴らしいものとなって来ている。
たとえ練習のための会場であっても、日本各地から集まる選手たちに気持ち良くトレーニングに集中できる環境を用意することは、静岡県フットサル連盟の鎌田理事長が常々口にする「おもてなし」(←旬なはやり言葉ではありません!)の実践でもある。もちろん時間が許す範囲でのご協力であるのだが。
さて、スタッフの到着とほぼ同時にピッチ設営も終了。
おかげで筆者にとっては最も大事な(?)スタッフの方々との雑談のための時間を取ることが出来た訳だ。あくまでも雑談であるのでその内容はたわいもないことばかり。
「しっかり準備が整った会場でトレーニングを行うことができるのは、選手たちの気持ちの面でもプラスになると思います。時間の面でも無駄が省けますし到着からウォームアップそしてトレーニングとスムースな流れで進めることができますから。準備のお手伝い、本当にありがとうございます。」と感謝の言葉をいただいた。
「ただ、この環境に甘えさせないこと。あたりまえだと思わせないことが僕らスタッフの役目でもあります。多くの方に支えられてこその日本代表なのだと言う自覚を持たせたい。」とも付け加えていただいた事をご紹介しておくことにする。
※急な展開にもかかわらずお手伝いいただいたみなさん、ありがとうございました。メジャーを使わない設営としたら上出来のピッチですね!!
この日の練習そのものは、Fリーグ試合直後でもあり、リカバリーを兼ねた軽めのメニューばかり。これはミゲル監督が行うトレーニングキャンプではこれまで同様のルーティンである。
時間をかけたストレッチののち、ピッチ半面を使用した「鬼ごっこ」からオールコートでの追い駆けっこに。そして足でボールを使い始めた4対2のロンドのメニューでも手で操るボール1個を選手に与え、さまざまなルールを要求。ルールを無視した奇怪なプレーに味方からも「何やってんだよ!」と笑いの罵声が飛ぶ。
そして最後は9対9のゲーム。ここでもさまざまなルールが与えられるが、フィニッシュはボールを手で拾い上げパントシュートまたはハンドパスからヘディングでのダイレクトシュートのみ。
このメニューでも珍プレーの連続で終始笑いが絶えない選手たち。ただ、そんな中でもやはり代表として招集されている彼らの脅威の身体能力を垣間見る瞬間も多数あり見飽きることはなかった。
最後のゲームではゴレイロ3人が大活躍したビブスチームが、名古屋オーシャンズ・バサジィ大分からの招集組中心のビブ無しチームに圧勝!負けチームへの罰ゲームはゴールラインからゴールラインのランニング10本!という厳しい(!?)ものだった。
以下に練習終了後、通訳兼コーチの小森氏を介し伺ったミゲル・ロドリゴ監督のお話をご紹介したい。
▼昨年のワールドカップ前、三浦和良選手の代表招集で多くのメディアがここエコパに集結して以来のトレーニングキャンプになりますね。あれは10月初旬のことでしたからちょうど1年前の事になります。ようこそ!再びエコパへ!!
・・・ありがとうございます。ここエコパはフットサル日本代表にとっての「第2の故郷」との思いがあります。
▼早速ですが、今週のエコパそして次週に神戸でのトレーニングキャンプが予定されているわけですが、今回招集された代表にとっての当面の目標はどんなところにあるのでしょう?
・・・まずは来年5月のAFCフットサル選手権へ向けてのスタートです。代表経験が豊富なベテラン勢と、年齢も若く代表経験も浅い選手たちの融合を目指します。チームとしてまったく新しいことにチャレンジするわけではなく、これまでの日本のフットサルのスタイルを継承して行く中で、さらに厳しく3つの点を向上させチームとして共有したいと思います。まず日本人のスタイルに合ったフットサルを追求する、たとえば勤勉さや緻密さはパワープレーやセットプレーを完成させていくための重要な要素と言えるでしょう。アグレッシブなディフェンスも日本人的と言えると考えます。次に仲間、チームを優先し自分の考えだけで行動を起こさないことを徹底する。自分はスペイン人ではあるけれど、この考え方の重要さは良く分かりますし、なによりフットサルにとって必要なことだと思います。3つ目、これこそが今の日本にもっとも必要なことだと思います。それは「ディフェンスで死ぬ!」(死ぬ気で守りきる)ことです。これまで多くの試合で肝心な場面でディフェンスが破たんし失点することがありました。そこの強さが身についたら日本は世界のトップ5のチームに間違いなく入ります。
▼ワールドカップ終了後の海外遠征には若い選手の名前が多くあり「世代交代」とも言われていたかと思います。期待の若手、期待する選手として名前を挙げるとしたら?
・・・直前のリーグ戦での負傷で今回は合流できなかった内村は、年齢も若く国際試合の経験も少ない中でインドアゲームズでは素晴らしいプレーを見せてくれました。室田や吉川も若く才能ある選手です。また、滝田や仁部屋は前回のワールドカップには参加できませんでしたが、これからのメンバーの中心となって欲しいと思います。そしてもう一人、西谷です。彼はチームにとって不可欠なハードワークをやり通せる汗かき屋だけでなく、ピッチでタクトを振るようにチームを動かすことができる選手です。
▼彼らの成長がこれからの代表の鍵となる?
・・・すべての選手にも言えることですが、必要なのは海外の強豪との対戦など、厳しいプレッシャーの中でプレーする「経験」です。今回招集したメンバーの中から、海外での試合経験を積ませるために3ステップのスケジュールを予定しています。まずは10月末のグランプリ。ここでは新生ブラジル代表との対戦も実現します。ファルカンと数人の選手を除き、監督も含めワールドカップ時とはがらりと変わったブラジル代表との対戦は楽しみです。ふたつ目は11月に予定しているベトナムでの親善試合です。3つめは春先のヨーロッパ遠征になります。(※注:すべて現時点での予定)
▼木暮選手の引退、小宮山選手が招集外と、これまでキャプテンマークを付ける機会が多かった選手が不在となりますが。
・・・これまでもそうでしたが、誰か一人に(キャプテンを)固定することはしないでしょう。年齢や経験値で行くと北原や村上、稲葉にその役が回る可能性が高いとは思いますが、滝田はインドアゲームズで素晴らしいキャプテンシーを見せてくれました。時々の流れを見ながらキャプテンマークを渡したいと思います。少し先まで考えると、次回のワールドカップで北原、村上、稲葉が代表としてプレーすることは(年齢的にも)ないでしょう。しかし、彼らが残していく代表選手としてのプレー、振る舞いは次の世代にしっかりと引き継がれていくはずです。
▼最後の質問です。9月末に行われたAFCフットサルクラブ選手権で日本代表の守護神、川原選手が大きな怪我を負ってしまいました。もちろん今回のキャンプにも召集されていません。年齢的にも(もし今回招集されていれば)最高齢選手ですが、それでも代表ゴレイロのリストのトップは川原選手に変わりはないのでしょうか?
・・・今の時点で日本のゴレイロで最も優れているのは川原だという考えに変わりはありません。怪我の回復もまずまず順調とのことですし、つい最近も電話で連絡を取っています。やはりここ一番では彼の力が必要なのかもしれません。ただ、藤原、冨金原は代表経験も豊富ですし、若きゴレイロ関口も素晴らしい選手です。ヨーロッパ遠征でのプレーは周囲をあっと言わせるほどのパフォーマンスを披露しました。ですので、(川原選手の)回復の進み方にもよりますが、今後の海外遠征などで仮に川原不在の事態となっても心配ないと思います。彼には、焦らずしっかりと怪我を治してほしいと思います。
以上がミゲル監督にお話を伺った主な内容だ。
そしてこの日、スタンドから木暮選手(←選手ではないですが)が練習を見守っていた。若い世代の強化・育成も受け持つ木暮選手にとってトップの代表活動を視察することも重要なことであろう。解散間際の短い時間しかピッチレベルに移動されなかったのでごあいさつ程度となってしまったが、再びチャンスがあれば是非、若手を受け持つ立場としてのお話などを伺ってみたいと思う。
このトレーニングキャンプ、10月1日の午前と午後、そして明日10月2日の午前にも練習が予定されている。