開催日:2021年3月7日(日)
会場:浜松アリーナ
TEXT & PHOTO :橋爪 充
静岡県浜松市の浜松アリーナで行われた第26回全日本フットサル選手権決勝、トルエーラ柏対フウガドールすみだは延長戦の末5対1で柏が勝利し、初優勝を決めた。F2チームが全日本選手権で優勝するのは初めて。
退任を表明した須賀雄大監督の最後の試合となるすみだと、浦安、名古屋、大分のF1チームをなで斬りにした、〝智将〟岡山孝介監督率いる柏の対戦だった。
2セットでやりくりするすみだはスターティングのピヴォ森村孝志を、途中からセカンドセットに入れ込み、諸江剣語、北村弘樹のフィクソ2人がそれぞれのセットを統御する。
柏も2セット態勢。ファーストセットのピヴォ野村啓介がサイドに降りてボールを受けるシーンが目立つ。フィクソのサカイ ダニエル ユウジが積極的に前に出る。時間が進むにつれて、右サイド深くに長いボールを多用。すみだのディフェンスの押し下げに努めた。
前半はスコアレス。後半に先手を取ったのは柏だった。27分、ペナルティーエリア周辺に顔を出したサカイがマーカー2人に囲まれながらもボールキープし、反転シュートを決めた。
後半からピヴォにガリンシャを起用するすみだだが、寄せの速い柏のディフェンスに苦しむ。1点ビハインドのまま時計は進む。
すみだは事態の打開を狙って残り4分から中田秀人をゴレイロに据えたパワープレーを開始。37分、扇の要の位置でボールを保持した鬼塚祥慶が右足を一閃すると、左ポスト脇のDFに当たってゴールに吸い込まれる。これで同点。すみだは苦しんだゲームを延長戦に持ち込んだ。
前後半5分ずつの延長戦。42分、左サイドの強いキックインが大外で待ち構える佐藤建也の足元に抜ける。これを佐藤がしっかりモノにし、柏が勝ち越した。すみだはこの直前、ゴール前のFKでガリンシャのシュートがバーに当たるなど、得点の予感があっただけに、ダメージが大きかった。
すみだは後半開始直後から再びパワープレーを開始。だが、寄せが厳しい柏の守備網をなかなか突き破れない。
柏は残り2分から内野脩麻のパワープレー返しなどで3点を追加。すみだの息の根を止めた。
最終的な点差は開いたが、実質的には2対1のゲームだった。前後半を通じて、2チームが少しだけ相手を上回る時間帯が交互に訪れた。綱引きの中心点が、ほんの数センチずつ左右を行ったり来たりする。そんな印象だった。リーグ戦では顔を合わせることがなかった2チームが、お互いに存在証明をぶつけ合った、魂の入った一戦だった。
▼トルエーラ柏 5-1 フウガドールすみだ
27分 サカイ ダニエル ユウジ(柏)1-0
37分 鬼塚祥慶(すみだ)1-1
42分 佐藤建也(柏)2-1
48分 内野脩麻(柏)3-1
49分 佐藤建也(柏)4-1
49分 岩永 汰紀(柏)5-1
▼トルエーラ柏・岡山孝介監督
―日本一になった感想を。
非常にうれしい。選手たちに恵まれて、ここに連れてきてもらったような気分。選手たちに感謝している。
―来週の入れ替え戦に向けて得たことは。
慢心が一番怖いが、選手たちは(全日本選手権で)名古屋に勝った後も変わらなかったし、初戦、2戦目のカテゴリーが下の相手でも最善の準備をして出し切ってくれた。心配はしていない。
―ベテランの活躍はどう映っているか。
成長していると思う。僕が町田や浦安でやっていたときも、しっかりトレーニングを積んでいる選手は成長している。探究心をもって練習に励めばまだまだ上達できる。フットサルはそういうスポーツだとおもっている。彼らのあくなき探究心を若い選手たちが手本にして練習に励んでいる。
▼トルエーラ柏・中村友亮選手
―今日の試合、大会を振り返って感じたことは。
大会に向けてやってきたこと、積み上げてきたきたものを2回戦からできていた。自分たちのフットサルをやれていることには自信があった。一体感があったと思う。個人としては、前からディフェンスするスタイルなので、スイッチ役としての役割がうまくできた。
―キャリアの中でもかなり良い状態ではないか。
ことしは練習、コロナの影響でできなかったが、チームからいろいろなメニューをもらって、意識高くみんなやってきた。良い入りができた。チームが全員100%120%だす。みんなやってきた。練習から充実した1年だと思う。
―出身地でもある静岡県、しかも前所属の本拠地でもある浜松で輝かしい結果を得たことについての思いは。
本当ならこの大会は東京で開催されるところ。いろいろな状況で準決勝、決勝を浜松アリーナでやることになった。そして自分たちが勝ち上がって、浜松アリーナでプレーさせてもらえた。気持ちの高まる部分があった。いい結果も出て、充実した大会になった。
▼トルエーラ柏・サカイ ダニエル ユウジ選手
―今日の試合の感想は。
チームとして良い準備をし、良い戦いができた。
―準決勝と比較して、前線に出る場面が多かったように感じたが。
昨日のゲームは自分のコンディションに不安要素があった。痛みがあったが試合をこなした。今日は痛みがましになっていたので、攻撃できるところは攻撃しようと思った。コンディションの面で、今日の方が動きやすかった。
―今シーズンのプレーに対する感触は
岡山監督とは町田時代からプレーさせてもらって、やりたいフットサルが把握できていたことが、今シーズンの自分のパフォーマンスに直結した。ハードワークする中で、自分の長所がチームメートに分かってもらえた。リーグ、全日本で優勝できた。残りの入れ替え戦も良い準備をして、力を振り絞ってやっていきたい。
▼フウガドールすみだ・須賀雄大監督コメント
―試合を総括すると。
柏は浦安そして名古屋、大分というチームを連続で勝ち抜いたチーム。Fリーグで名古屋大分の連戦を連勝できるチームがどれだけあるだろうか。リスペクトされるべき実績だ。ただ、リスペクトして戦うことで、彼らに違う戦い方をさせられると思って(ゲームに臨んだ)。4枚のボール回しに粘り強く対応していくことで、いつもと違うゲーム展開をさせることが狙いだった。(すみだの)選手には難しいタスクを与えたが、それをこなしてくれた。素晴らしい選手たちだった。
―けがをしている諸江選手、ガリンシャ選手が長い時間起用されていた。選手起用の狙いは。
基本的には粘り強く、我慢強く戦う(ことがプランだった)。相手の4-0の戦術に対して、ピヴォが張ってこない時間帯はアクティブな守備ができる諸江をつかった。相手ピヴォの野村選手はセンターで張るだけでなく下りてきて4枚でボール回しができる。そこにしっかりプレッシャーをかけたいと思った。(そうした状況で)自分が決断したのが諸江、北村だったということだ。諸江はけがを抱えてはいたが、それを上回る気迫で試合に臨んでいた。北村は失点にかかわったが、これからのフウガを背負うフィクソになるだろう。
―柏対策は。
対戦が昨日決まったので、特別な対策はしていない。自分たちは自分たちの戦い方を構築してきた。Fリーグにはいろいろなハイレベルなチームがあり、このチームにはこの戦い方という経験値がたまっていく。柏との対戦でも当たり、自分たちの引き出しから戦い方を引き出すことができた。トレーニングの経験値があったから対応できたと思う。選手がプランを遂行するインテリジェンス、自己犠牲心があることが前提。そこは素晴らしかった。
▼フウガドールすみだ・諸江剣語選手
―柏の印象は。
優勝にふさわしいチームだと思った。最強の相手ということはやる前からわかっていた。実際に戦ってチャンピオンにふさわしいチームだったと(感じた)。
―拮抗したゲームの中で先に失点した。どういう心境だったか。
(すみだも)チャンスが作れていたし、やり続けようと思った。必ずチャンスは来る、決めるだけだと話していた。実際に追いつくことができて延長になった。相手のセットプレーの(守備では)集中はしていたが、まだまだ力が足りなかった。今までなら、あそこは止めることができたはず。単純に力がなかった。
―すみだのほうがプレッシャーが強かったか。
立ち上がりは柏のプレッシャーが強く、押し込まれた時間も多かったが、後半の最後や延長に関しては、こちらの時間もあったしチャンスも作れていた。フリーキックでガリンシャがバーに当てたシーンもあった。紙一重だったが、勝てなかったということは、力が足りなかったのだろう。柏がチャンピオンにふさわしいチームだった。
▼フウガドールすみだ・鬼塚祥慶選手
―今シーズンは中心選手として戦った。個人として、チームとして1年の感想を。
個人としてはゴールを挙げることもできたが、それ以外に貢献できるところもあると思う。来シーズンに向けて、そういうところを突き詰めていかなくてはいけない。
―同点ゴールのシーン。シュートを決断した経過は。
相手ディフェンスが引いている状況だったので、後ろから狙えると思った。シュートパスのような形でセグンドに向かって思い切って蹴りこんだ。
―今シーズンの自分の成長をどう感じているか。
シーズンを通してプレーするという目標は達成できた。これからはシーズンを通して良いコンディションを維持してプレーしていかないと。代表に選ばれるためにも、もっともっと出場時間を長くし、活躍したい。