この日の守山スポーツセンターでのスケジュールは、第1試合に続きこの第2試合も静岡県勢同士のダービーマッチが組まれていました。
そう言えば、この試合時間には2部の会場でも「XEBRA vs スリーク浜松」の静岡ダービーが・・・。
そちらの結果も気にしながらの第2試合の観戦でした。
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■大和撫子/VIORA藤枝 0 vs 2 EMERSON FC
昨シーズンの東海2部を制し今季の1部リーグへステップアップしてきた大和撫子/VIORA藤枝(以下、大和撫子)。その2部での戦いは成績の割には注目度が今ひとつと言えなくもなかった。言い換えれば「このチームはこれだ!」というスペシャルなパーツを個人にも戦術にも持たず、チームの総合力で一歩ずつ進んで来たと言う事だろう。今季は剣持(XEBRAからの移籍)、阿野(XEBRAからの復帰)というチームの顔にもなれる選手が合流し、昇格初年度ながらも上位を狙う準備は万全だ。
対するEMERSON FC(以下、エマーソン)の昨季の成績は東海1部第3位。フットサル経験値が高くない若者達ががむしゃらに戦った結果ではあるが、そのシーズン中での成長も目を見張るものがあった。ゴレイロ鈴木、フィクソの小嶋の両ベテランを底辺に、選抜での貴重な経験を積んだ大石や身体能力に優れた太田など昨季を経験した若者達がさらに躍動すれば、今季も周囲をあっと言わせる成績を残せるのではないか。しかしこの日のベンチに太田の姿はない。
キックオフは大和撫子。
試合開始からほんの10数秒が経過した時、この試合の行方を決めたかもしれないプレーが起きた。と、書いたらご批判を受けるだろうか?
もちろん筆者はその瞬間からそう思ったわけではない。が、試合が進むにつれ「やっぱり、あのプレーが・・・」との思いが次第に強くなり、試合が終わった瞬間にはそれが確信へと変った。
「そのプレーとは・・・」などと書くと大げさな超大作へ発展しそうな気配もあるが、なんてことはないプレーなのだ。
キックオフからボールを廻した大和撫子は、左サイドを野木が突破しゴール前へ早いボールを蹴り込む。そこに合わせて走りこんだのはXEBRAからの復帰を果たした阿野だった。
ドンピシャのタイミングかとも見えたが、ボールスピードが思いのほか速かったのか、若干振り遅れ気味となった阿野はこのチャンスを決めることが出来なかった。
エマーソンの立場で言えば、わずか十数秒でこの日のゲームプランがもろくも崩れるところだった。
そのゲームプランとは、「しっかり守ってカウンター」と、まぁ、よくあるものとも言えるだろう。
自陣に引きコンパクトな陣形で構えるエマーソンは徹底的に縦を切り、出し所、進み所が無くなった相手には二人目が加勢しボールを奪う。あるいは無理な横パスを出させてはインターセプトからの速攻を狙う。
経験豊富な小嶋が底を受け持つだけに、他にも幾つかのプランを描いていたとは思うが、この日の大和撫子に相対するにはこの決め事だけで充分だった。
大和撫子は単純なパス交換にも安定感が無く、高い位置でのポジションを要求する出し手と、セイフティーな位置まで降りて待ちたい受け手との呼吸が合わず、あっけなくボールを失う事が多かった。
やっと繋がった高い位置へのパスも受け手が時間を掛ければ、エマーソンの若手の寄せに苦労する羽目になり、やっと見つけたスペースにボールを出せばそこは小嶋が仕掛けた罠のエリアだ。当然パスを読みきった小嶋は常に相手より一歩先にボールを蹴りだす。ドリブルでの仕掛けも集中したエマーソンの寄せを突破できず潰される。
攻撃の形が出来ない大和撫子は剣持、鈴木修平、望月が遠目からシュートを放つが体を張ったエマーソンの守りの前に跳ね返されると、ルーズボールにいち早く追いつくエマーソンが人手を掛けずドリブルからシュートまで行き着く。
まったくプランどおりの展開で前半を終えたエマーソン。攻め手が見出せない大和撫子。0-0のスコアの割にはハーフタイムのベンチの顔色に差があった。
もしも最初のプレーで大和撫子が先制していたら、もっと試合が大きく動く展開になっていたことだろう。
後半に入っても、特に策を見出したとは思えない大和撫子の攻撃を前半同様、自分達の取り所でものにすると、この日の開幕4試合で最も印象に残るゴールが生まれる事になる。
後半が3分ほど過ぎただろうか。ハーフライン付近でボールをインターセプトしたエマーソンは2対1の数的優位な状況で速攻を仕掛ける。
左サイドを斎藤が、右サイドを山口が大和撫子陣内をダイレクトで強いパス交換を行いながらスピードも落とさず前進、最初の一往復でディフェンスをかわすともう一往復で飛び出した大和撫子のゴレイロ鈴木陽太をもかわし、最後は左サイドの斉藤が無人のゴールへきれいに蹴り込んだ。
後半早い時間でのこのゴールは、リードしたエマーソンでさえ「ちょっと早いかな?」と感じたかもしれない。当然取り返しに来る大和撫子の攻撃に厚みが出ることを想定したことだろう。しかしこの日のゲームの流れはすでにエマーソンに向かって強く流れていた。
「攻撃に厚み」ではなく「攻撃へのあせり」からファールの数も増やしてしまった大和撫子は後半10分が過ぎた頃、ファールカウントが5に達してしまう。
程なく犯してしまった6個目のファールをエマーソンの大石に決められ追いつくどころかリードを広げられてしまう。
試合時間が刻々と少なくなる中、大和撫子は鈴木周平をゴレイロにパワープレーを行うが、やりたいことが形にならないまま時間だけを使ってしまった。
試合はこのまま2-0でエマーソンが勝利。
面白い試合だったかと問われれば、決して「はい」とは言えない試合だったが、ふたつの点でこの日の4試合の中でのベストがあったゲームだったと感じている。
一つは先制点の場面、二人のパス交換に会わせ会場が次第に大きな歓声に変わりゴールが決まってどよめきが起きた。多くの観衆もこの日のベストゴールと認めてくれるのではないだろうか。
もう一つ、エマーソンが見せたゲームプラン通りの試合展開をピッチで実現したその再現率も最も高かった。
新戦力を迎え入れ、戦前の予想では圧勝では?などと思われていたこの試合での敗戦は長いシーズンを戦う大和撫子にとっては良い薬になっただろう。昨年のゲームの流れを思い出し次節以降チーム力が上向きになる事を期待したい。
良く守ったエマーソンだが、ディフェンス面ではやはり小嶋頼みである事は隠し様がない。
今日のように外からしか攻めて来ない相手には中で待ち落ち着いた対応が出来たが、東海1部には様々な攻めを持ち味とする強豪がひしめく。どのようなゲームプランでも今日ほどの再現率を見せられれば良いのだが・・・。
さて、この試合を振り返り、エマーソンの会心の勝利と捉えるか、大和撫子の不甲斐ない試合だったと見るかは人それぞれだろう。
いずれにしても、開始直後のあのワンプレーが両チームの明暗を分けた試合だったと強く感じた筆者だ。
■得点経過(※公式記録による)
▼前半
※両チーム得点なし
▼後半
23分→EMERSON FC:斎藤佳彦(6)
32分→EMERSON FC:大石綾(8)第2PK